新潟家庭裁判所高田支部 昭和42年(少)285号 決定 1968年5月01日
少年 S・Y(昭二五・六・五生)
主文
少年に対し、強制的措置をとることはこれを許可しない。
理由
一、新潟県上越児童相談所長が、少年につき児童福祉法二七条の二、少年法六条三項により家庭裁判所の審判に付すべき事由があるとする要旨は、送致書記載のとおりであり、少年が昭和四二年七月八日高田市新潟県上越児童相談所において自殺の意志で睡眠薬を飲むという異常行動があり、同種行動反覆の可能性があつたことおよび他人に危害を加える虞もあつたことならびに少年の環境が不安定であり両親の所在も不明であつたことから少年の性格、環境に照して将来罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をする虞があつたことも認められる。
二、しかし、
(1) 少年は昭和四二年七月八日睡眠薬を飲んだ後精神病の疑で中頸城郡大潟町大字犀潟にある国立犀潟療養所精神科に入院せしめられ、心因反応と判定され目下加療中であり、少年もこれに適応して療養につとめているので現状は安定した状態にあり、
(2) 保護者S・I(父)は糸魚川市大字○○×××番地○田アパート内に居住しておりかつ少年の所在を知つて糸魚川市役所に少年に対する医療的措置をとるよう交渉し、その結果少年に医療的措置が行われることになつた経過、更に保護者は少年が完全に治癒するまで少年を同所におき治療後は担当保護司と相談して適職につけ安定させたいと言つており、当裁判所の調査の結果、少年に対する今後の保護体制は一応期待が持てるものと認められるので、以上の諸点を総合し、少年に対しては現在強制的措置をとる必要がないと認め、主文のとおり決定することとする。
(裁判官 佐野昭一)